SFTSとは、2011年に中国で初めて報告された比較的新しい疾患です。

2013年には日本(山口県)でも確認され、その後日本国内でも西日本を中心に毎年60名前後のヒト患者が報告され、50代以上の死亡率は20%程度とされています。

また犬や猫でのSFTS発症報告もありますが、まだまだ報告数が少なく得られる情報は非常に限られています。

 

先日山口大学で開催されたSFTSに関するシンポジウムに参加し、詳しい情報や新しい情報を得ることが出来ましたので、要約して皆様にお伝えしたいと思います。

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<SFTSウイルスについて>

そもそもSFTSの原因となるウイルスは、以前から日本国内に存在していた様で、さかのぼると2005年に採取されたヒトや動物の血液にもウイルスが確認されているそうです。

(つまり、SFTSであると診断出来るようになったのが最近のことのようです)

 

 

<マダニについて>

SFTSは主にSFTSウイルスを有するマダニに咬まれることにより感染します。

(家庭内に生息するコナダニやヒョウヒダニは、マダニとは異なりSFTSを媒介しません。)

 

マダニは大きさが数mm~20mm程度で、葉の裏に潜んで動物やヒトから吸血する機会を伺っています。

 

春から秋の比較的暖かい時期に活発になるとも言われていますが、マダニの種類によっては年中認められる場合もあります。

春には比較的大きな成ダニが多く、秋には小さくて見つけづらい幼ダニが多いそうです。

 

マダニ類の多くはヒトや動物に取りつくと、少しの間服の上や体表を歩いてから吸血を開始します。

吸血時間は数日~10日以上と言われ、吸血中は皮膚から除去するのが困難です。

無理に取ろうとすると、マダニの一部が皮膚に残ってしまったり、マダニの体液が飛び散る恐れもあります。

 

 

<動物のSFTSについて>

日本では西日本を中心に犬と猫のSFTSが報告されています。

山口市内でも猫のSFTSが診断されています。

 

これまでの報告例を見ると、ヒトと同様の症状(元気、食欲の低下や血液検査での異常)を示し、犬よりも猫で重症化しやすいようにも見えます。

猫では残念ながら死亡した例もいます。

 

また外を出歩き、過去にもマダニに咬まれたことのある動物が多いようです。

動物病院で処方されるノミ・マダニ予防のスポット剤や内服薬を使用していた犬や猫でも、残念ながらSFTSの発症例がありました。

 

 

<犬や猫のSFTS予防について>

ノミ・マダニ予防薬

先述したように、ノミ・マダニ予防薬を使用してもSFTSを発症した犬や猫が報告されているので、予防薬だけでSFTSから100%動物を守ることは出来ません。

これは予防薬を使用していても、体表に取りついたマダニを駆除するには薬が効くまでに多少の時間がどうしても必要になることが関係しているようです。

しかし、予防薬が全く無駄かというとそうではありません。

1つはSFTSウイルスを保有するマダニをヒトの生活環境に持ち込まないこと、もう1つはSFTS以外の皮膚疾患や血液疾患の予防につながるということです。

 

マダニ予防

予防薬ではSFTSを防ぎきれないとすると、どうすればよいのでしょうか?

猫は外に出さないというのが、マダニと接触しないかなり有用な予防法になります。

いまだに猫は外に行かないとストレスが貯まると信じている方もいますが、決してそのような事はありません。完全室内飼育でもストレスなく過ごせますし、外に出ないことでケガのリスクやSFTSを含めた様々な感染症に罹るリスクも減らせるのです。

 

またお散歩などで外に行く犬はどう予防すれば良いのでしょうか?

1つはお散歩コースを見直すことです。先に書いたようにマダニは葉の裏に潜んでいます。なので、草の生い茂った場所を避けて散歩することは有用です。

もう1つブラッシングも有効です。マダニは体表に取りついても吸血を開始するまでに多少の時間が空きます。なので、散歩後の自宅に入る前にブラッシングを行うことで、吸血する前のマダニを取り除くことが出来るのです。

 

 

長々と書きましたが、不明な点がある場合は直接お問い合わせを頂いても構いません。

また、公的機関のHPにも情報がありますので、そちらも参考にして下さい。

国立感染症研究所 https://www.niid.go.jp/niid/ja/sfts/3143-sfts.html

厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000169522.html